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prologue

 変化は嫌いだ。
 
 例えば、入学や引越しなどの生活環境の変化だけでなく、時間が進むだけで苛々する時もある。現状維持が何よりも落ち着く安定剤であり、毒にもなっている。
 自覚しているのに、求め続けてしまう。
 止まっているのは楽だからだ。走っている人間を想像してほしい。彼は疲れている。何故なら、走っているからに他ならない。
 では、疲れない為には何をすればいい?
 
 ただ、立ち止まればいいだけの話だ。

 俺は昔から、ひねくれているのかもしれない。それを変えたいとは思わなかった。高くなろうとはしなかった。時々歩いて、少しでも疲れたと思えば立ち止まり、また歩き、休み、の繰り返し。
 そう開き直り開き直りやっていた俺だが、ついにそのツケが回ってきた。
 後悔が恐い。だから進めない。努力出来ない。変われない。すぐに疲れてしまう。周りにいい顔ばかりする。嫌われたくないから。評価を変えたくないから。上がらなくてもいい。下がらないのなら。“普通”でいい。“平均”が欲しい。
 自分を、甘やかしても良い理由が、欲しい。
 

 そうして今日も、自業自得の自己嫌悪に苛まれている。
 体が重い。余計に進み辛くなった。視界が曇る。指先が冷たい。それにも、とうに慣れてしまった。

 しかし、俺は変わることになる。


 ──『君は、止まったままで楽しいのかい? いや、君は止まっているんじゃない。僕には、むしろ逃げているように見えるよ』


 
 憎くも愛おしい、博学な彼によって。

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